黒腹さんは建設業法によって区分された工事の種別について解説します。
「ところで、さっき建設業許可の28工種とおっしゃっていましたが、それは一体何なんですか?」
「業種と呼んだり、工種と呼んだりもしてたっすよね?」
「はい、さきほどもチラっと触れましたが、現場で実際に施工されている工事の種類は、建設業法により便宜的に28種類に区分されています。一般的(役所や専門家の中では)には「業種」と呼ばれているものです。ここでは混乱を招かないように工種と表現しています。」
「俺の場合、4種類に区分されていたみたいだけど、他の工種も念のために教えてもらっていいですか?」
「それでは、まず28業種(工種)一覧表を見てみましょう。この表に概ねの工事の具体例などが挙げられています。」
「なるほど、確かにこの表を見ると『とび工事』、『土工事』、『コンクリート工事』なんかが一つの区分になっているので、俺の場合は全部で4種類になりますね。」
「そうなんです。これらの区分は役所側の便宜上の物なので、現場サイドで見た時は悩ましいものもあるかもしれませんが、原則この表に従う必要があります。」
「でも、あれっすね。こんな細かいの考えるの面倒臭いし、『土木一式工事』ってのを取れば、一発で全部クリアできるんじゃないっすか?」
「たしかにそうだな・・・。結局、俺ら一式請け負うことが多いしな・・・。」
「この点、みなさんがよく誤解されるポイントなんですが、『一式』の工種はすべての専門工事について許可を得られるものではありません。」
「え?でも土木一式なんですよね?建築系はどうあれ、土木系は全部請け負えるんじゃないんですか?」
「『一式』の工種はさっきの表にもあるように『元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整のもとに行う工事』を指します。これは他の26種類の専門工事をすべて請け負えるという意味ではなく、あくまでマネージメントする業者向けの許可区分なのです。役所などが『工種』ではなく、『業種』と表現するのもこのあたりが関係しているのかもしれません。」
「ということは、『一式』ってのは企画などのみを行って、下請けに投げているようなデカい会社のみの許可区分って訳ですか?」
「そこまで言っちゃうと、身もフタもありませんが、確かにそういう側面があります。ただ、専門工事を自身で行っている事業者が結果的に総合的なマネージメントを行う状態っていうのはよくあります。そこで、念のために一式の許可を取ってるケースは多いんですよ。」
「それにしても、『総合的な企画、指導、調整のもとに行う工事』ていうのは曖昧すぎるわ・・・。もう少しわかり易い基準はないのかしら?」
「まず、土木一式の場合は比較的分かりやすくて、複数の下請業者によって施工される大規模な土木工事とされていますので、必然的に橋梁、ダム、空港、トンネル、高速道路、鉄道軌道、公道下の下水道などの工事などに限られてきます。逆に掘削、切土、盛土、締固め、整地といった粗造成のみを施工する場合は『とび・土工・コンクリート工事』になります。」
「建築一式の場合はわかりにくいんっすか?」
「わりと判断に迷うことが多く、都道府県ごとに扱いが異なったりします。わりと明確なのは、『建築確認申請が必要な工事』は建築一式になりますので、新築工事や増築工事などは建築一式になるでしょう。難しいのは改修工事です。改修工事は壁、柱、床、梁、屋根、階段などの主要構造部の一種以上についての過半修繕工事や、6畳間を増改築するような場合に「建築一式工事」とされますし、複数の専門工事で施工され、請負金額が高額であれば、建築一式とされる場合もあります。」
「あ、なんか考えるのがイヤになってきたっす。建築系が専門外ってのもあるけど・・・」
「請負金額で考えるのはちょっと、おかしい気もするけど、いくらぐらいなんですか?」
「そうですね。ここでは数百万円以上としておきます。都道府県によっては壱百万円あたりがラインの場合もありますが、ニ、三百万円以上であれば、建築一式と同等な複数の専門工事で施工されるものとなりやすいと言えます。」